■「基本の徹底」

●今回は,2題。
先日,山口のほうにお伺いしたときに,昨年の二代目さん向け合宿に参加され
た社長と,久しぶりにお会いした。
いろいろな名所にお連れ頂いたあと,その社長の会社&お店にお伺いすること
となった。

●「あれが,私の店です」と社長は言った。
車のフロントガラス越しに,お店が見えた。

きれいなお店だ。私は第一印象をまずそう持った。

中に入れていただく。
隅々まで,掃除が行き届き,ほこり一つ落ちていない。
だから,空気もとてもすがすがしい。

●お店の接客テーブルに案内される。
お店の裏には工場があるが,そこと出入りするドアが見える。
上部はお互いの様子がわかるように,透明ガラスになっている。
そのガラスに何か,ちらっと見えた。
僕は,ドアに顔を向け,なんだろうとガラスのほうを見た。
するとそのドアの向こうで,男性がお辞儀をして大きな声で「いらっしゃいま
せ」と言っている。

●お客様のお相手をする社員のみなさんも,みんな笑顔が素晴らしい。
こちらまで,元気に明るくなってくる。

●この会社は,昨年の売上をさらに伸ばし,快進撃を続けている。
社長は僕と同じ年だ。
厳しい業界だから,毎年売上を伸ばすことは大変なことだ。

●「でも,たいしたことはやっていないじゃないか。みんな当たり前のことだ
らけだ」
そう思うあなたは,まだまだ経営の本質がわかっていない。
経営は,当たり前のことを当たり前のようにやることなのだ。
当たり前のことが当たり前のようにできなくなる。それもまた経営なのだ。

●挨拶など,うちでもやっている。そう思う方も多いだろう。
この会社も同じだ。ただ,違うのは,お客様が振り向くまで挨拶をすると徹底
していることだ。
社長は,挨拶もお客様に伝わらなければ意味がない。どんなに深深とお辞儀を
しても見てもらわなければやっていないことと同じだ。
そう,社員に言い聞かせ,徹底を図っている。
言葉にすると当たり前のように聞こえるが,そこまでやっている会社がどれだ
けあろうか。

●掃除だって,我が社も徹底している。そう胸を張る方も多いだろう。
しかし,この会社の掃除は半端ではない。
国道に面したお店の一面ガラスを曇り一つ無く磨きあげることがどれだけ大変
か,ご存知だろうか。
僕は,小売業にいたから,その大変さとすごさがよくわかる。
ほこり一つない状態を保つことがどれだけ大変か。
店舗で,それを達成するには,日に最低3回は掃除をしないといけない。
それだけ,ほこりはすぐにたまってしまうものなのだ。

●当たり前のことを当たり前のようにやる。
掃除と挨拶だけで,この社長の方針がわかるし,経営の手法も理解することが
できる。

一事が万事なのである。
一事が,できなくて万事はできない。それをこの社長さんは,身を持って示し
ているように思えた。

●経営は,シンプルだ。
ソニーの出井さんや日産のゴーンさんが言うことと,松下幸之助など偉大と言
われている経営者の名言集とが一致することは偶然ではない。

どんなに時代が変わろうとも経営の本質は変わらない。

何故なら,経営は人の営みそのものであり,人の本質は携帯電話やとインター
ネットで技術を謳歌している現代も聖徳太子のいた太古もまったく変わってい
ないからに他ならないからである。

技術は進歩しても,「綺麗だな」と思う心,「清々しいな」と思う,人の心は
昔も今も変わっていないのである。


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