■【失敗から学ぶ成功する経営】

10.アイデアを育てられずに失敗する

●このメルマガで以前リサイクル事業を販売促進として始めたとい
うことを書きましたが、それ以外にもいろいろなアイデアを私が出
して新規事業を始めようと試みました。

●まだ、ホームページが大手企業の、それも意識の進んだところが
やっとオープンしている時代に、当社もがんばってホームページを
開き電子商店を始めました。これは、散々の結果だったことを前に
も書いたとおりです。しかし、インターネットをビジネスネタとし
て傍観者的に話すだけでなく、自らその中に飛びこんでみて、「こ
れはこれからの商売は根本から変わる!」と確信しました。

●ご存知のとおり、考えられない費用で自ら情報発信ができること、
画像・動画も発信できること、24時間要員なしでオープンできる
こと、など今までの概念を覆す価値が特徴です。この特徴を生かし
て何か新しいビジネスを立ち上げられないだろうか、と考えました。
というのも、婦人服の小売は6,7年前ほどから構造不況の体を現
わしてきていて、1つの柱だけではまずい、という危機感がそのよ
うな新規事業の立ち上げを後押ししたのでした。

●ホームページを作成する会社は、検索エンジンで調べたある会社
でした。いくつかに同じ相談メールを送り、一番回答が丁寧な会社
にしました。実際お会いしてみると、丁寧なメールどおりとても誠
実な会社でした。
今のようにホームページ作成ソフトなどなく、HTMLを書いて作
るのですが、そのようなことを勉強しながらやっていく時間など私
にはなく、すべて作成をお願いしました。ホームページのイメージ
を伝えていくということはとても難しいことで両者の根気がいる作
業でしたが、とても良いサイトを作ることができました。

●インターネットを利用した新しい事業を実行するにあたり、この
ホームページを作成してくれた会社に全面的な協力をお願いしまし
た。まず取り掛かったのは、お客様の古着リサイクルのものすごい
反応からヒントを得た、「売ります買います」サイトの開設でした。
ちょうどリクルートの「じゃマール」のサイトがオープンした頃で、
個人の売買ビジネスの仲介サイトは絶対いける!と思い作り始めま
した。データベースとつなげたり、投稿やその削除が手軽にできる
ようにしたりといろいろ工夫をして作り上げました。おそらくこれ
はそのまま継続していれば、オークションサイトへと広がりをみせ
ていたと思います。

●次には、「売ります買います」のサイトと同じように、ネットで
は情報のマッチングが一番適していると考え、「掲示板サイト」み
たいなものを作りました。気のあった仲間だけがその掲示板を見れ
るというもので、今ではごくごく当たり前のものです。それもアク
セスする際のセキュリティについてきちんとしたものを作ったりし
て手間を掛けて作成しました。

●さらに、今後は光ファイバーが普及して画像だけでなく動画も配
信が可能となり、コンテンツビジネスが絶対いける!と思い動画配
信のビジネスを始めました。これは、自分の音楽業界の経験を活か
し、アマチュアのバンドや音楽家などの演奏を撮ったビデオを送っ
てもらい、こちらでデジタル処理してそれをサイトで公表するとい
うものです。そして、ファン投票をしてもらい、とても人気がある
バンドや演奏家にはデビューの道を開けてあげるというものです。
当然当時はまだまだネットは普及していなくて、無名のバンドが演
奏を披露するのはライブハウスだけでした。ですから、このような
配信ができるようになると、自分達の発表の場が増えてよいのでは
ないか、と思ったわけです。

●そして、このようなコンテンツビジネスは行く行くは、衛星放送
時代をにらんで行なうというものでした。当時から少しずつですが、
衛星放送時代、デジタル放送時代のことがマスコミにも出てきてい
て、脚光を浴びるようになってきていました。衛星放送時代になれ
ば、チャンネルがたくさんできて、良質なコンテンツがたくさん必
要になります。このような時代に備えてまずはネットでその芽を育
てておこうと思ったわけです。しかし、衛星放送はこの2001年
になった今でもまだまだという感じであり、あまりに先取りしすぎ
た戦略でした。

●このような新事業の取組の結果がどうだったのでしょうか。成功
していたら、このような文章は書いていませよね。当然、全部失敗
しました。利用する方が少なく、課金どころか認知さえままならな
い、そんな状況でした。それでも1年半近くは事業単体では赤字で
も継続して頑張ってみました。しかし、まったく見通しが立たずあ
きらめざるを得ませんでした。

●実はこの新事業のために、私の後輩で大手情報処理会社にいた男
性を口説き落として招聘していたのでした。外部の力を借りながら
彼と組んでいろいろやってきましたが、結局私の力不足でうまくい
きませんでした。この新規事業を中止するという決断とした時、な
にがつらかったかというと、この彼にそれを伝えることでした。幸
い、彼も頭がいいですから察していたようで、また実力ある人間だ
ったので再就職ももっといいところにもっと良い待遇でできたので、
それがせめてもの救いです。

●これらの新規事業の失敗は、すべて時期尚早であったということ
です。もちろんアイデアの稚拙もあると思いますが、それを証明す
ることができないほどまだ市場がなく、あまりに早すぎたアイデア
であったということです。だからといってこのアイデアをもう少し
遅らせて実施していたら成功していたか、ということはまた別なこ
とです。成功していたかもしれないし、また別の原因で失敗してい
たかもしれません。神のみぞ知る、です。

●私には、アイデアを温めて時期を探り実施するという能力が決定
的不足しているようです。思いついたことは何でも実行してみたい、
そんな衝動にかられてしまうのです。タイミングとかをしたたかに
計算するということができないのです。これは、創業者、起業家と
しては決定的にまずい、と思っています。創業者、起業家は良いア
イデアを生み出す力があるだけでなく、それを市場へ送り出すした
たかな能力も必要なのです。どちらがなくても新事業は成功しませ
ん。しかし、どちらもその人の性格に起因する部分がとても大きい
ように思います。ということは、創業者、起業家として大成するに
は生まれ持った資質が必要である、と言えるのかもしれません。

●この私の失敗を読んでみて、あなた自身はどうでしょうか?タイ
ミングは見極められるけどアイデアが出ませんか?それとも私と同
じようにアイデアは出るけどタイミングを誤ってしまうタイプです
か?
新事業を成功させるためには、まずは自分の性格を良く知らなけれ
ばいけません。そして自分の性格で失敗の元になりそうな部分を他
の人に補ってもらいましょう。アイデアを助言できる人、タイミン
グを助言できる人を自分のまわりに置きましょう。それをしないで、
突っ走ると私と同じような失敗をしてしまいます。失敗はいろいろ
な外的要因がありますが、それだけでは失敗しません。会社が外部
からの攻撃で壊れることは少なく、壊れる時は内部から壊れるのと
同じです。社長の失敗も社長自身の気質・性格に根本は起因してい
るのです。それを補う優秀な参謀を見つけることができるか、成功
はそこにかかっていると言っても過言ではないと思います。
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