失敗の理由
Γリース契約で失敗しました」その1

(バックナンバーから是非ご覧くださいhttp://www.alfalfa-c.com/bn.htm)

■経営のお金に関する話はたくさんあるが、今回はリースについて
触れてみたい。
りース契約では私は大きな失敗をし高い授業料を払ってきた。ご存
じの方にはまったくアホな失敗であるが、恥を忍んでお話していき
たい。
もう14,5年前のことである。当時、店頭での売上は商品バーコ
ードによる管理ではなかったため売上の集計は手入力でコンビュー
夕ーに入れなければならず、その作業に時間がかかり月次を正確に
杷握するのに1箇月以上かかっていた。そんな計数管理でまともな
経営ができるはずがなく亊業を継いでまずやらなければいけないと
実行したことが、全店POSしジス夕一導入であった。当時はオー
プンネットワークなんて言葉もイン夕一ネットなんていう言葉もな
く、中小企業は、高額なFAXを買うか買うまいか悩んでいた、の
んびりした時代であった。そんな時代であったのでPOSレジ1台
百数十万円する時代で、一度に9店舗導入というのは冒険であった
のでとりあえず2店舗に入れ、徐々に各店に導入しようということ
になった。ソフトは、今のようにアプリケーションソフトなんてな
いので当然自社開発となった。そんなこんなでソフトウェアとハー
ドウエア合わせて総額約6千万円のプロジェクトとなった。数社見
積りをとったのだが、最後は大手コンピューターメーカーの大手販
売代理店とさらにその下につく販売代理店の2社が残り、下請けの
販売代理店の方がさらに低くに出してきた。加えて下請け販売代理
店は毎日営業しに来ていたので情も入ってしまって冷静な判断を失
い、結局根負けした形で下請けの販売代理店に正式発注した。

それからはSEが業務を把握してソフト開発を進めていったのだが
なかなかうまくいかずあっと言う間に3か月が経ってしまった。
時間ばかり過ぎるので、まだソフトは完成していないがとりあえず
機器を社内に置いてSEがわが社に来て開発をしていこうとなった。
それで機器が会社に搬入されたのだが、下請けの販売代理店は機器
も会社に搬入されたしリース契約をしてほしいと言ってきた。
ハードソフト合わせて6千万円と高額なので、当然その機器はりー
スで購入しようとなった。リースであれば月々分割払いのように支
払いができるし、費用として落とせるし、銀行から新たに借入をし
なくてもいい、いわゆるオフバランスできるからいいのではないか
と思った。今で言われているリースのメリットである。
これは企業経営からすると一見メリットがあるように思われるが実
はそのメリットを得ることにだけ目を向けると会社にとって大変な
リスクに気が付かないでリース契約をしてしまうことになる。

■コンピューター機器が会社に搬入されると2,3日してリース会
社が来てシールををペタべタ機器に貼り、「現物を確認したので押
印して下さい」と言ってきた。検収書と書かれていたが納品書みた
いなものだろうと思い「あいよ」と気安く印鑑を押した。

この1つの押印がこのリース契約の悲劇の始まりであった。

その後、機器は納入されたもののソフトは依然完成せず、SEも毎
曰は来ていたがまったく開発が進まなかった。つまり簡単に言えば
開発能力がないところに発注してしまったのだ。それからSEも下
請けの販売代理店の社長もだんだん来なくなり、ソフト開発はほっ
たらかしとなってしまった。電話をしてもなしのつぶて、あげくの
果ては逆切れされ、「ちゃんとやっているよ!」と怒鳴られる始末
だ。この頃からか、ビジネスはなめるかなめられるかだと過激な思
想が身についてきたのだった。社長がなめられたら損する、そんな
偏った思想もこんな経験を始めいろいろな辛酸を味わい持ってしま
い、それも失敗の遠因かもしれない。

■そんな、すったもんだしている間も月々55万円のりース料は当
座から引き落とされていく。こんなのはとんでもないとまずはその
親会社の大手販売代理店に駆け込んだが、うちではどうしようもな
い、ソフト開発費は下請け会社が受け取っているのでうちでは開発
できないと取りつく島もなかった。
それならばとリース会社にソフトが完成するまでリース料は払わな
いと言ったらそれはリース契約上できないし一回でも未払いとなっ
たら即法的手投に出る言われてしまった。今でこそマスコミも取り
上げたりしてリースのしくみについては、世間も少しは明るくなっ
てきているようだが、当時の私にとってはどうしてこんな理不尽な
ことが起こってしまうのか皆目見当がつかなかった。

■このケースで一番悪いのは、もちろん下請けの販売代理店だ。ソ
フト開発も放り出し、挙句は逆切れだ。
しかし、なんで彼らはそこまで強い態度で出ることができるのか?
それは、私が気軽に「あいよ」と押してしまった検収書に原因があ
るのである。

■リース契約は購入者である私の会社とリース会社が結ぶ。この契
約の中にはは販売代理店は入らない。では、販売代理店はだれから
販売代金をもらうか、というとそれはリース会社だ。しかも一括で
受け取ることができる。今回であれば6千万円のお金を一度に受け
取ることができる。それ自体すごいことだが、問題はいつその販売
代金を受け取るか、だ。それは、検収書に印鑑が押された時だ。検
収書に購入者が押印してしまえば、販売代金は一括して販売代理店
に支払われるのである。
このケースでは、検収した時点ではまだソフトも完成しておらず、
コンピューター機器自体は単なる使えない箱と同じだ。にもかかわ
らず検収印を押してしまったがために、下請けの販売代理店に一括
して6千万円がリース会社から支払われてしまったのである。6千
万円受け取った会社が、きちんと最後まで完成させるかはその会社
が誠実であるかどうかでしかない。詐欺にかけようという意図はな
かったにしてもそれだけのお金が手に入ってまともに仕事するだろ
うか?会社が一生懸命顧客の言うことを聞くというのは、早く入金
してほしい、代金を回収したいというモチベーションがあるのは否
定できない。この下請けの販売代理店はそんなモチベーションだけ
で仕事をする不誠実な会社であったので、仕事を放り投げてしまっ
たのである。

■検収印を押してしまえば、代金は一括して業者に支払われ、さら
にリース会社と購入者とのリース契約には一切業者は関与しない。
リース会社もリース物件が機能を果たしているかとか、ちゃんと動い
ているとか一切関与しない。検収印を押した時点でそれは購入者が
大丈夫と認めたことになるのだ。
そんなことはリース会社に事情を説明して、リースの支払いを止め
ればいいじゃないかと思われるかもしれな。リース契約書を見てい
ただきたい。そんなことが許されるような文言はどこにもない。
逆に延滞した場合や、中途解約した場合の違約金についての文言が
目立つのではないだろうか。

■今回の失敗からの教訓は、リースで物件を購入する場合、絶対に
安易に検収印を押してはいけないということである。例えばコピー
機が会社に搬入されたとしよう。最低でも1週間は不具合がないか
チェックしたほうがいい。その間リース会社が来て検収印を押すよ
う言うだろうが、平然と「瑕疵がないか確認できるまで押さない」
と言えばOKだ。検収印を押さなければコピー機の販売業者は代金
が入金されないから、具合はどうでしょうか、と盛んにアフター
フォローをしてくる。最後は、もう検収してください、と言うかも
しれない。しかし、購入者が納得するまで絶対に押印してはいけな
い。押印したら最後、リース契約が発効されてしまうのである。
仮に不具合があったとしても初期不良で交換や修理してくれるでは
ないか、というご意見もあるだろう。しかし、それは甘い。
どうして、初期不良で交換や修理の対応してくれると言い切れるのか。
そんな保証はどこにもないのである。決して信用してはいけない。
契約の鉄則である。
そのような意味からも大手から購入するというのはこのようなリスク
が軽減する。大手は株主や消費者からの監視の目があるので、そう
そうひどい対応はできない。やはりこういう場合は大手からとなっ
てしまうが、リスクを取るのは購入者ということを考えれば致し方
ない面はあるかと思う。

■私のこのケースはその後どうなったかというと、顧問弁護士に
相談して、損害賠償請求を起こした。この販売代理店の社長は和解
の話し合いにも遅刻したり欠席したりして、どうしてこんな不誠実
な人間から物を買ってしまったか、自分がいやになるくらいだった。
公正証書までとって和解し、月々何万円かの入金をしばらく受け取
っていたが、結局その販売代理店は破産してしまいその後なしのつ
ぶてとなってしまった。
そんな時も、そしてその後も5年間倉庫に眠った使えないオフコン
のために月々55万円を払いつづけた。今も思い出すだけでがっく
りくる失敗だった。

■それでも、POSシステムを入れた商品管理、売上在庫粗利管理
顧客管理は絶対に必要だと思い、リース料をどぶに捨てながらも、
次の機器の導入を検討し、ある方から紹介を受けて別の某大手コン
ピューター会社と話しをすることとなった。そうしたらおんぼろ
のわが社にそのコンピューター会社の取締役の方がお見えになって、
「失敗した経緯が伺っている、わが社としてはできる限りの応援を
する、リースの検収は遠畑さんが納得する時期までいつまでも待つ」
と語ってくれた。検収はなかなかしませんよ、と言ったら、何年で
も待つと言ってくれ、さらに一筆書いてくれたので、こちらにお願
いすることとなった。無駄なリース料を払い続けているにもかかわ
らず、POSシステムの重要性を認識してなんとか導入したいと思
うこちらの熱意とコンピューター会社のプロとしての誇りが一致し
た素晴らしい時であった。
その後そのシステムが順調に稼動し、会社の収益性の向上や効果的
な販促、顧客満足の実現におおいに貢献したのはいうまでもない。

■次号ではもうひとつリース契約で気をつけなければいけない点を
お話していきたいと思う。
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