■音楽と経営 その2

●私の音楽体験は,小学校の頃からだ。今では当たり前の音楽教室
やピアノ教室に通うということでは,ない。
家にあったレコードプレーヤーに,これまた家にあったホームクラ
ッシックのレコードを何度も聴くということだった。
ただ,それだけだ。でも擦り切れるくらい聴いていた。
そして,割り箸を持って指揮者になったごとく,振り回していた。
レコードのジャケット裏に,「カラヤンの指揮棒のレプリカをプレ
ゼント」という小さい広告が載っていて,それをいつも見ながら,
一度カラヤンの指揮棒を持ってみたいな,と子供心に思っていた。

●ただ,レコードを聴いて,割り箸を振り回す。それだけのことで
あったので,音楽が特に成績が良かったということもなく,学校の
音楽の授業は,どちらかというとあまり好きになれなかった。
なにしろ,譜面が読めないのだから,面白くないのも当然だった。

●中学に入る頃になると,お決まりのパターンで,ロックに興味を
持ち始める。私の世代は,なんと言ってもデープパープルだ。
気が狂ったように聴いていた。
そして,ドラムに興味を持ち始める。授業中も,机の引き出しの中
で,カタカタと人差し指でリズムを刻んで,何度も先生に注意され
た。

●そんなドラム好きが嵩じて,中学3年の時に,ドラムセットを買
った。
小遣いやお年玉をを貯めて買ったのだった。
「TAMA」製で,当時で確か7万円だったと思う。池袋の楽器店
で買った。
それからというもの,暇さえあれば家でドラムを叩いていた。
今では,近所迷惑で怒鳴り込まれるだろうが,そんなこともなく許
された,のんびりした時代だった。

●高校に入ってからは,なぜかバンドをやろうと思うことはなかっ
た。サッカーが好きだったので,サッカー部に入ろうと思っていた。
1年F組だったが,その教室の隣が音楽室だった。
休み時間になると,きれいな音色が流れていた。
よく聴けば,モーツアルトのアイネクライネだ。
なんの楽器かな,と隣の音楽室を覗いた時だった。
後ろから,「どうぞ入って」と促されて,背中を押された。
そして,勧められるままに椅子に座らされ,楽器を抱えさせられた。
なんだ。この楽器は???
「マンドリンっていうんだよ」
これがマンドリンか,そういえば明治生まれの祖母が昔マンドリンを
弾いていたって聞いた事があったなぁ。
そんなことを思っていると,ピックなるものを持たされ,弦をちょっと
爪弾くと,「おお〜才能あるねぇ」と周囲から誉められた。
おれって才能あるのかな,なんて思ったが,それが新入部員勧誘の典型
的手口だと気付くのは,入部してしばらくしてからだった。

●サッカー部に入ろうと思っていたのに,なぜがまったく違うマンドリ
ン部に入ることになってしまった私は,それから音楽漬けの青春を送る
こととなる。
隣に音楽室があってちょっと覗いた,そんな行動が,私の人生を大きく
変え,自分の隠れていた才能に気付くターニングポイントになったのだ
った。

次号に続く・・・・



戻る
戻る